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胡蝶の夢
第6章 腐蝕
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カリカリと不快な音がする。
真夜中に時を刻む時計の針のような、規則的で無遠慮な硬質音。
呑み込まれるように音は白い壁に溶けていく。
爪の先がボロボロになるくらいに何度も壁を掻むしった。
この白い壁紙を剥がし取れば、向こうに何かが見える気がしたのだ。
なんでも良い。
本当に少し、くすんだ壁紙の向こう側が見られれば良かった。
この監獄の中は地獄だ。
無意味な行動に意味を与えるほどに狂っている。
何の生産性もない行動に切れそうな精神の一糸を頼るくらいに。
「ふふっ…」
誰かに笑われた気がして見回しても誰もいない。
「ふふふっ…」
笑い声は僕自身の口から洩れていた。
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