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蝶の標本〜もうひとつのトパーズ〜
第5章 距離感
和仁さんが出張から戻った夜、
岳人さんが話があると言ってダイニングテーブルを囲んだ。
なかなか口火を切らない岳人さんに、
和仁さんが穏やかな口調で「どうしたんだ?」と訊く。
「家を出たい。
おばあちゃまの家でも良いから…」と言った。
「ん?
どうして?」
「…」
岳人さんは涙を流している。
「ママが…」
「えっ?」
「ママが僕に…」
和仁さんが私の顔を見る。
「拘束して、
服を脱がせて…」
涙で話を続けられないようだった。
「岳人さんは私のものでしょう?
だから…教えてあげたの」
「何をしたんだ?」
「何って…。
セックスしたのよ?
お口でもしたし…」
和仁さんの顔がみるみる青ざめていって、
唇を震わせる。
「なっ…なんてことを!」
「岳人さんだって、
ちゃんと勃ってて…
ナカに出してくれたわ」
「判った。
岳人、荷物を纏めなさい。
連絡しておくから」と言って、
岳人さんは自室に行く。
「ダメよ?
岳人さんは私の…」
「違うよ。
岳人は、僕達の子供。
梨香子さんは母親だろう。
だから、そんなこと、してはいけないんだ」
「嫌よ。
岳人さんと離れたくないわ。
なんてことするの?」
「なんてことを?
それはこちらの台詞だよ。
なんてこと、したんだ?」と、
私の頬を打った。
私は初めて手を挙げられたことより、
岳人さんを失うことへの哀しさで、
部屋に入ってベッドに倒れ込んで泣いた。
岳人さんが話があると言ってダイニングテーブルを囲んだ。
なかなか口火を切らない岳人さんに、
和仁さんが穏やかな口調で「どうしたんだ?」と訊く。
「家を出たい。
おばあちゃまの家でも良いから…」と言った。
「ん?
どうして?」
「…」
岳人さんは涙を流している。
「ママが…」
「えっ?」
「ママが僕に…」
和仁さんが私の顔を見る。
「拘束して、
服を脱がせて…」
涙で話を続けられないようだった。
「岳人さんは私のものでしょう?
だから…教えてあげたの」
「何をしたんだ?」
「何って…。
セックスしたのよ?
お口でもしたし…」
和仁さんの顔がみるみる青ざめていって、
唇を震わせる。
「なっ…なんてことを!」
「岳人さんだって、
ちゃんと勃ってて…
ナカに出してくれたわ」
「判った。
岳人、荷物を纏めなさい。
連絡しておくから」と言って、
岳人さんは自室に行く。
「ダメよ?
岳人さんは私の…」
「違うよ。
岳人は、僕達の子供。
梨香子さんは母親だろう。
だから、そんなこと、してはいけないんだ」
「嫌よ。
岳人さんと離れたくないわ。
なんてことするの?」
「なんてことを?
それはこちらの台詞だよ。
なんてこと、したんだ?」と、
私の頬を打った。
私は初めて手を挙げられたことより、
岳人さんを失うことへの哀しさで、
部屋に入ってベッドに倒れ込んで泣いた。