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蝶の標本〜もうひとつのトパーズ〜
第1章 結婚生活
医者として箔をつける…
ということで、
和仁さんにニューヨークの大学の研究室で1年だけ専門分野の研究に携わるという話が舞い込んだ。


海外での生活も楽しそうで、
和仁さんとの距離が縮まるかもと思って、
私も同行することにした。

両親から、
海外に単身赴任させるのは世間体が悪いと言われたこともあった。

私が不自由しないようにと、
父が限度額無制限のカードを持たせてくれた。

母は、
「あちらに2人が居るうちに、
ニューヨーク、遊びに行くわね!」と楽しそうにしている。

セキュリティを考えて、
比較的安全なエリアにあるコンシェルジュが常駐するマンションと契約をした。
家具付きなので、特に用意するものは無いと言われた。


色々な準備についても、
和仁さんは殆ど私に任せっきりで何もしてくれなかった。

おまけに、忙しいといって、
私を抱いてくれることもなくなってしまった。


結婚早々、浮気されてる?
それとも、元々、オンナが居たとか?


疑念が湧いて、気持ちがドロドロするけど、
怖くて何も訊けなかった。


恥ずかしいからと通販で買ったいやらしい下着を身につけて、
和仁さんの上に跨ったのに押しのけられて、
背中を向けられてしまったことで、
気持ちがすっかり冷めてしまった。


「判ったわ。
なら、自分でするから!」

背中を向けて寝たふりをしている和仁さんの隣で、
声を上げながら自分で胸と股間を弄った。

それなのに、
和仁さんは本当に寝息を立てて眠ってしまっていた。

馬鹿にされたような気持ちになって、
悔しさで泣きながら枕で和仁さんを叩くと、

「梨香子さん、どうしたの?」と、
おっとりした言い方で言われて、
余計に涙が出てしまった。

「ん?
生理前で情緒不安定なんじゃない?」と的外れなことを言われて、

「もう、良いわ!
あっちで寝るから!」と言い残すと、
来客用の寝室で寝た。

その後も、出国するまで寝室を別々にして過ごした。

でも、和仁さんが、
寝室に来てくれることもなかった。

私は通販サイトで買った玩具で、
自分を慰めて夜をやり過ごした。



ニューヨークに行ったら、
関係が修復するかもしれない。

心の奥で、心からそう願っていた。




でも、ニューヨーク行きが人生の歯車を変えることになることを、
その時は誰も知らなかった。
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