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大魔女の遺言~子作りしないと出られない部屋に閉じ込められて~
第5章 正攻法
 サラサの髪が輝きを放った瞬間、黒に染まっていた長い髪が、見事なまでの艶のある赤毛へと変わっていた。まるで真っ赤な花弁を開いたかのように、ベッドに広がっている。

 幼いレイが、真っ赤な花が咲いている、と表現したように。

 ああ、と低い感嘆の声が聞こえた。

「綺麗だ、サラサ。やっと見られた、本当のお前を……」

 すっと赤く長い前髪をかきあげると、少し緩んだ赤い瞳で彼を見上げるサラサの顔が現れた。その表情には、戸惑いがある。

「待って、レイ……心の準備がまだ……」

「随分待った、いや、待たされた。なのにまだ待てって言うのか? それに俺は、部屋を出られないとか関係なく、今ここで、お前が欲しい。誰かに奪われる前に、全部俺のものにしたい。だって――」

 言葉が途切れ、彼の唇が耳たぶを這った。ぞくっとする感覚が背中を走り、サラサの肩から首筋にかけてピクンと跳ね上がる。

 薄く開いた唇から思わず洩れた声色は、自分ではないような甘さを含んでいた。

 少し離れた彼の唇が、熱い吐息が、サラサの髪を揺らす。

「まだ俺たちが、法や紙上だけの夫婦だなんて、不安すぎるだろ?」

 次の瞬間、唇に温かいものが乗った。
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