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自分であるために~涙の雨と晴天の虹~
第3章 黒い想い出と愛情
***
舞台メイク練習当日。美紅さんとお友達になった話をすると
「いい友達ができそうで良かったね」
と微笑んで、頭を撫でてくれる。
──ドキッ。
また胸の高鳴りを感じた。けれど、あの人気ぶりを見て、余計に恋人はいますか? 恋愛対象は? なんて、いざ会うと聞けなくなってしまった。遊びでもいいから私と……なんて言う勇気も、告白する勇気も私にはない。今、京さんを失うと私には何もないから。
新しくできた友達? 里親?
確かにそれはあるけれど、それとはまた別問題で。生きる希望というのは、また別の話で。なんて私の気持ちを理解してくれる人はこの世界にどれくらいいるのだろうか? ふと、そんなことを考えた。
「あっ。これ、あげる。友達できた記念」
そう言って、京さんは、未開封の色付きリップクリームを私にプレゼントしてくれる。
「ありがとうございます! 一生、大切にします!」
「そんな大げさな……。でも、それだけ喜んでくれて嬉しいよ。こちらこそ、ありがとう」
微笑んで、また私の頭を撫でてくれて……あぁ、そういうところがさらに好きになってしまうんだよ……と言いたくなるのをグッと堪えた。
夏休みが終わろうとしていた──。