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自分であるために~涙の雨と晴天の虹~
第1章 生きにくい世界で出逢った人
「君じゃ、呼びにくいから名前は?」

「心愛です。鈴原心愛」

「心愛ちゃんかー!! 可愛くて、いい名前だね! ……お、笑ったら可愛いじゃん! 俺の友達が言ってたんだけど、女の子は笑うと何割増し? か可愛くなるんだって! できるだけ笑っときなー!」

「あ、ありがとうございます」

 ナチュラルに言うもんだから、私は微笑んでしまった。心が溶かされていく。この感覚は、いつぶりだろうか?

「じゃあ、仕事道具(コスメ)、少し補充したら、帰るわ!」

「わ、私も一緒に見ていいですか? コスメのことまるきり分からないので、参考にしたくてっ!」

「いいよ、いいよー! ついておいで!」

 そのあと、京さんは、定番らしい下地やらアイライナーやらマスカラやらをかごに入れて、購入した。メイクブースだけを借りるのは、さすがに申し訳ないからという理屈らしい。出来た大人だ。

「ごめんなさい、私にメイクしてくれたから……」

「謝らないで! メイクは俺がしたかったから。それに買い物は元々、する予定だったし! 本職の休日に補充しないと中々、時間とれないんだよなー!」


「あ、ありがとうございます」

「とりあえず、次、またメイク練習頼みたい時とか困るから連絡先交換して。L◎NEやってる?」

「あ、いや……やってないです」

「おっけー、おっけー、じゃ、メールアドレスで」

「それなら、あ、これです」

 私達は連絡先を交換して、解散する。

 夕飯後、スマホを見ると、

『今日は楽しかったよ。ありがとう!』

 律儀にメッセージが入っていて、頬が緩んだ。メイクは、養母が絶賛してくれた。どうしたの? と聞かれ、友達にしてもらったと言うと安心して喜んでくれた。なんか、ごめんなさい……と、チクりと胸の奥が痛む音がした。
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