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空の記憶~あなたと私と彼、それから~
第14章 番外編第二話「潮騒の詩」 海辺の恋
その頃、母の胎内には亮平がいた。父は悪阻(つわり)で苦しむ母に新鮮な海の幸を食べさせてやりたくて、昔からの禁忌を破ったのである。父が海で亡くなったその日、海は波一つなく穏やかであったという。
だが、父が母の止めるのもきかず、船を出してからものの一刻も経たない間に俄(にわか)に黒い雲が空を覆い尽くし、生暖かい風が吹き始めた。その中(うち)に雨も降り始め、たちまちにして海は荒れ狂う魔物へと転じた。