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空の記憶~あなたと私と彼、それから~
第14章 番外編第二話「潮騒の詩」 海辺の恋
乗っていた小舟は転覆し、父は溺死した。父にとって、海は物心つく前から常に身近にあり、父は泳ぎも達者であった。が、いかに泳ぎの達人でも、風雨に荒れ狂う海の前ではなす術(すべ)もなかった。亮平はこの世に生まれ出る前に父親を失い、母は寡婦となった。亮平が三つの時、世話をしてくれる人があって、母は亮平を連れて再婚したが、その翌年、新しい良人との間に娘が生まれてからは、亮平に対する継父の態度が眼に見えて冷たくなった。