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濡れて堕ちて……
第12章 審判
「俺と結婚した時の事、覚えてるか?」
「え?」
私に背を向けたまま、まるで独り言のように浩一が呟いた。
何の脈絡もなく始まったその内容。
浩一の後ろで立ちすくんだまま耳を傾けた。
「お前が妥協して俺を選んでくれたって言うのは大体気づいてたよ。
俺は口下手だし無神経だし、それで散々女にフラれて来たから、俺を選ぶ女なんてこの世にいないと思ってたぐらいだ。
お前が俺からのプロポーズを受けてくれた時、俺内心、飛び上がりたいほど嬉しかったんだからな」
あ、確かに、私が浩一からのプロポーズを受けたのは妥協したからだ。
さっさと結婚しちゃいたい、とか思って
この人でいいやってだけでOKしたんだ。
気づいてない、気づくはずないって思ってたのに。
「でも、結婚生活が始まったらお前の気持ちが読めるって言うか…
お前の顔に『結婚相手間違えた』って書いてあるような気がしてさ。
当時まだまだガキだった俺は、ずっとお前に八つ当たりしてた。
俺の事を好きだって言ってくれてるお前の言葉すら疑ってた」
確かに思ってた。
わがままで自己中で、何でもかんでも私任せで何もしない。
完全なる王様タイプ。
助け合いなんて浩一の頭の中にはないんだろうってずっと思ってた。
結婚相手を間違えた…、何度も思った事か。
「結婚して8年。8年かかったけど、最近になってそれなりに気づいたつもりだった。
お前にばっかり負担かけて、何もかもお前のせいにして、ただ必死に『何で俺じゃダメなんだ!』って被害者面してただけだったって。
今までの自分を振り返って反省して改善したつもりだったんだよ━━━━━━━━━」
ザァザァと殴り付けるような雨音が鳴り出した。
音から察するにかなりの豪雨だ。
まるで、浩一の怒りみたいだ。