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第2章 雨の夜に

音もなく、細く頼りない雨が濡れたアスファルトに降り注ぐ。

鉛色の重苦しい雲から落ちてくる無数の雨は、闇に隠れ、光に照らし出され、ただ静かに世界を濡らす。

風はなく、湿気に冷やされた空気はその場に留まり、人の流れや走り去る車の風圧に翻弄されて蠢くのみ。


少女は、その中をさ迷っていた。

濡れそぼった髪の先に滴を溜めて、頬を流れ落ちる雨を拭うことなく、水気を吸い込んで重くまとわりつく制服が体を冷やしていることに気づく様子もなく、寂静を纏ってふらふらと歩き続けていた。

「……椎名？」

聞き覚えのある声がして、少女はぎこちなく振りかえる。
そこに、青い傘をさしてコンビニの袋を提げた少年が立っていた。

少女と同じ学校の制服を身にまとった彼は、切れ長の瞳を細め、雨に濡れる少女を訝しむ。

少女は僅かに首を傾げて、ぼんやりと少年を見つめた。