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ホンモノはいらない
第2章 雨の夜に
「な…がせ……」

少女の口から漏れた声は酷く掠れ、どこか現実から切り離された世界を漂っているようだった。

「……どうした?」

傘の中へ入れようと近づいた少年は、焦点の定まらぬ瞳にぎくりとする。

「何が……」

触れた肩はひんやりと冷たい。

少年は息を飲み込んで少女の体を見下ろした。

少女の制服を鈍く濡らしているのは雨とは異質の何か。
すぐ側を走り抜ける車のヘッドライトが二人を照らし、雨に滲んだそれを露にする。

「何があった?」

少女は答えない。
虚ろな瞳に浮かんだ涙が溢れ、静かに頬を伝うのみ。

「……っ、いい。帰ろう」

冷たい肩に回した手が自然と震えていく。
少年は堪らず強く抱き寄せて、傘で少女を隠すように歩き始めた。

「か…える?……どこへ?」

半開きになった少女の口から、今にも消えてなくなりそうな声が漏れる。
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