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ホンモノはいらない
第2章 雨の夜に
「俺の部屋に。一緒に帰ろう」

少女を強く掴んでいる腕から、じんわりと雨が浸透してくる。
その冷たい感触に、少年はそっと奥歯を噛み締めた。

こんなに濡れるまで……


一日の授業が終わってクラスメート達が帰り支度を始めた時、少女は友人と楽しそうに話し込んでいた。

本当に楽しかったわけではないことを、少年は知っている。

それでも、ちらりと盗み見した笑顔に安堵した。

少なくとも、とても自然に笑えている。
だからもう、大丈夫。

そう信じ込んで、心配しなかった。


それなのに…


何が―――、


尋ねる代わりに、少年は少女を支える手に力をこめる。

「どこへ…」

少女は抗う様子もなく、促されるままにふらりふらりと歩いている。

「…帰ろう」

一緒に、帰ろう。

少年は何度もその言葉を繰り返した。

それ以外、何を言えば良いのか分からなかった。





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