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ホンモノはいらない
第3章 始まりの雨
バタバタバタバタ……ッ

人を感知して自動ドアが開き、駐輪場の屋根を叩く雨音が聞えてきた。
椎名真雪はぎくりと体を強張らせ、濡れて妖しく光っている暗闇を見つめた。

バタバタバタバタ……ッ

街灯が、大粒の雨を照らしている。


あの時も、突然降り出した雨が激しく窓を叩いていた。
暗く静まり返った室内に、自分の怯えた声が虚しく響いていた。

―――…お母さん?

みぞおちを抉るような恐怖に体がすくみ、心が震える。

―――お父さん?…お兄ちゃん。……いないの?

バタバタバタバタ……ッ

返ってくるのは、波のように打ち寄せる雨音だけ。

誰も答えてくれない。

―――…ねえ、

……バタバタバタッ

―――…お願い、返事してよ。

バタバタバタバタ……ッ

奥歯を噛みしめ、息を殺し、恐る恐るスイッチに手を伸ばした。

自分が何を確かめようとしているのか、その覚悟も出来ないまま……。
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