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揺れる心
第11章 星の結晶
夜、ベッドでのんびり横になりながら、
髪を撫でてくれるのも、
腕枕するように包み込んでくれるのもいつもの通りで、
お風呂も毎晩、一緒に入っていた。


「あのさ…
男の子…だよね?」

「ええ。多分。
何度か超音波で見たけど…
ついてますよね?」

「名前、そろそろ考えようか?」

「そうですね。
お腹に話し掛ける時も、
名前で呼び掛けたいですしね」

「あのさ。
漢字はまた、考えるとして…
『かいと』はどうかな?
『かい』でも…」

「…」

「えっ?
ダメ?
嫌だ?」

「名前を呼ぶ度に…
陸也さんも私も、
海斗さんのことを思い出しちゃいますよ?
お父様やお祖父様も…」

「そうか…。
そうだな。
ごめん。
なんかさ、海斗が生まれ変わって戻って来てくれたみたいな気がしたから」

「陸也さん、優しいのね」と言うと、
「優しいのは真理子さんだよ」と言って額にキスをしてくれる。

「ソラくんは?
星に因んでも良いけど…。
私、インドで陸也さんと一緒に見上げてた星空や青空に癒されたから…。
ちょうど陸也の陸、海斗さんの海、それに空って言うの、
良くないですか?星だと、呼び難いでしょう?
セイヤくんだと…昔の漫画みたいだし」

「ソラくんか。
可愛い名前だね?
呼び易いし。
そうしようか?」

「もう少し、考えなくて良いの?」

「インスピレーションで良いよ。
決まり!」

「この子は…まるで星の結晶みたい。
宝物ですね?」と言うと、
2人で涙ぐんでしまう。


それからはずっと、
陸也さんと私は毎日、
お腹に向かって話し掛けて過ごした。




そして、10月の終わりに無事に出産した。
ちょうど陸也さんは学会で札幌出張になっている期間だったけど、
帝王切開になったことで、出産日を調整出来て、
立ち会って貰うことも出来た。

少し入院期間が長引いてしまったけど、
毎日、大学病院から私の入院している部屋に来てくれては泊まってくれるので、
ワイシャツや下着のお洗濯を病院でお願いすることになってしまった。


土日は沐浴やオムツ交換、夜中のミルクまで私の代わりにしてくれるのを見て、
こんなに子煩悩なのねと驚いてしまう。

そう言うと、
「違うよ?
一番大事なのは真理子さんだから。
真理子さん、オペの後で大変だから、
僕、何でもするよ?」と言って、
周りからまた笑われてしまった。
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