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ナカまで愛でてトロトロに溶かして
第3章 【秘密の伏線】
この手の話は初めてする。
多分聞かれたくない事なんだろうけど敢えて私は踏み込む。
隠している核に触れた時、ふと見せる本当の姿を垣間見るのが楽しいから。
人間の一番厭らしいところを描いてるとね、つい性格も悪くなるんだよ。
偽物眼鏡をクイと上げて何から切り出そうか考え込んでいる顔。
「本当です……何ていうか、全部抱えきれなくなってきちゃうんです、その、皆さんが僕に完璧を求めてこられるので……凄いねって言われるけど逆にプレッシャーになったり、ちょっとの要望だったのが2つ3つ増えてって本当は僕より他の人に頼んだ方がスムーズにいってたんじゃないかって思ったら最後なんです……描けなくなる……」
話しながら震える手を一生懸命止めようとしてる。
そっとその手に手を重ねた。
両手で包み込んだ。
「ダメだよ、そんな自分を見下しちゃ……いっぱい努力してきたところ一番見てきた手だよ?ちゃんと毎回私の生み出す作品を手掛けてくれてる、形になってる、後世に残ってる、何より作品に息吹き掛けてもらえてるの蓮くんや千景ちゃんの力あっての事なんだよ?」
「それはアキ先生の生み出す世界観が素晴らしいからです……初めて心から尊敬するお方です」
「ちょ、恥ずかしいわ」
年甲斐もなく不意打ち過ぎてアタフタする。
「指示は的確だし無駄がない、悩む必要もないくらいスピーディーに作業に取り掛かれます、アフターフォローも怠らないじゃないですか、初めてですよ、そんな漫画家さん」
凄いじゃん!どうやって描くの?教えて!ってアシスタントに教えてもらってた。
それも初めて見たらしい。
どこまでも作品に貪欲で妥協がない。
締め切りギリギリなんて日常茶飯事。
それはギリギリまで悩んで世に送り出す為。
締め切り1時間前に描き直す事もあった。
なんて、ただ要領の悪い漫画家じゃない?私って。
「あ、でも此処はもうすぐ1年になるね?最長記録更新だ」
「はい……もし宜しければまだお手伝いしたいと思っています」
サラサラの髪をクシャっとして抱き締めた。
「バーカ、このタカラアキ様が手放す訳なかろーが」
「むっ!胸っ!当たってますって!」
あ、タンクトップだったわ、ヤバ。