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凌辱のストーリー~雌犬に堕ちていく「涼子様」
第1章 逆光(第一部)
不規則に続く石畳を擦り付ける音をたてて、啓造は歩いていた。

せり上げてくる不快な胃液を呑み込むと同時に、下品な音と共に臭い息を吐き出した。

「うー、頭いてー・・・。」

投げやりな動作で車のドアを開けると、倒れ込むように後部シートに座った。

五十前のがっしりした身体の上に、油ぎったむくんだ顔がのっていた。

唇は厚く、その隙間からヤニで汚れた歯が覗いていた。

酸味のきつい臭いが車中に広がると、それを消すかのように運転席の男がタバコに火をつけた。

「ゆうべは随分やったみたいっすね、先生・・・。」

ミラー越しに覗いた顔は妙に青白く、ひねていた。

世の中全てに拗ねているかの如くみえる男の顔は、無意識に平手が飛ぶには十分過ぎる程であった。

「イテッ・・・な、何するんスカ?」

「うるせーなー・・・お前の薄汚い茶パツは誰だって殴りたくなるんだよ、特に二日酔いの朝はなっ・・・。」

込上げてくる胃液と笑いが、啓造の顔を更にゆがめていた。

男の胸ポケットからタバコを取り出して咥えると、当然の如く顔を突き出した。

「そんなー、いくら先生でも・・・。」

言いかけた言葉は啓造の睨んだ目にかき消され、仕方なくタバコの火をつけるのだった。

「フーッ・・・。」

男の無力さを確認した啓造は、満足そうに煙を吐くと三度その頭を叩いて言った。

「いいから早く出せよ、田代っ。」

大ぶりのセダンがゆっくりと発進し、石畳の道を下っていく。

向かいの家の塀越しから大きな犬が吠えると、田代は舌打ちした。

この大きな屋敷が立並ぶ高級住宅街が田代は嫌いであった。

到底届かない夢、一生縁のない世界である。

ミラー越しに見える啓造、この男だって田代は殺してやりたいぐらい憎んでいた。

それと同時に、ベッタリと粘りつくぐらい寄りかかる自分も意識しているのだ。

矛盾する事であるが、世の中の悪が染付いたブタのような男が田代にとって唯一、安心出来る摂理なのだ。

心の中にある葛藤とか、そんな物は啓造の前ではちっぽけなゴミであった。

思春期に味わった不条理な屈辱や非行など、吹飛ぶ程の醜さを啓造に感じるのだが、返ってそれが何か正直に田代の気持ちを引き込むのだ。

啓造は巧みに人の心を操り、騙し、落し入れていく。

何人の人間が裏切られ傷ついていった事であろうか。
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