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あなたが消えない
第16章 夢か幻か、現実か
いつものように、翔がインターホンを鳴らす。

扉を開けると、私は愛しさのあまり抱き付く。

「翔、おかえりなさい」

「翼、ただいま」

お互いに名前を呼び合い、見つめ合って、また抱き締め合う。

そして、優しいキスをする。

「今日は早いのね」

私の問い掛けに、翔は微笑む。

「翼に早く会いたかったから」

私も嬉しくて、微笑む。

「まったくもぉ~」

翔の作業服を、私は受け取り、ギュッとそれすらも抱き締める。

翔の温もりを感じたくて。

幸せだな…。

翔の奥さんになると、幸せだな。

…えっ?

私は翔の奥さんなんかじゃない。

「翔、奥さんは?」

「翼と一緒になるために、別れたんだよ」

嘘…。

「翔、いいの?」

「いいんだよ。翼も旦那と、きちんと別れてくれるんだよね?」

「…うん」

私は頷いた。

翔が奥さんも子どもも捨てて、私と一緒になってくれるのならば、私は躊躇わずに和男と離婚するよ。

私を後ろから翔は抱き締める。

「俺と翼は永遠を誓い合った仲だよ。夫婦よりも深い愛で、結ばれているんだよ」

翔に言われて、私は微笑む。

「翔と一緒に居ると、幸せだよ」

「そうか…」

幸せになりたい。

今まで、生きてきた中で。

一番に誰よりも愛した人と。

この先も愛し抜けると誓った人と。

幸せになりたい。

「翔、やっぱり私はずっとあなたの側に居たい」

「居るよ。いつも俺はここにいるよ」

私は安心して、瞳を閉じた。

その言葉が繰り返し、繰り返し耳に残って、自分も口元を動かしながら、呟く。

「ここに居るよ…ここに居るよ…ここに居る…」

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