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あなたが消えない
第5章 沈んでいく
怖くなって目を閉じる。

でも一瞬だけ微かに開ける。

う、嘘っ…?!

永津さんの目は、キスをしながらも私を見続けていた。

私は身体が熱くなり、硬くなり、金縛り状態。

その強い視線で、張り付けにされた私は、口の中を舌先で引っ掻き回される。

深く底まで辿り着いてしまうくらい…。

奥への方まで緩やかに…。

螺旋をゆっくり描きながら絡めてくる…。

私はあなたに、何かしたの?

そう問い掛けながら、瞼を強く閉じたら、涙が溢れた。

すると、口唇が静かに離れた。

もう、言葉なんて出ない。

永津さんの姿も見れない。

「遠山さん、ご馳走様です」

はっ…?

私は、永津さんの言葉に自分の耳を疑った。

何、それ。

「タッパ、また洗ってお返ししに行きますよ。じゃあ、また」

と、言われて玄関の扉を開けた。

用は済んだから出て行け…みたいな顔をしていた。

「…はっ、はい。分かりました」

私は、うつむきながら部屋に戻って行くしかなかった。
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