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第8章 秘密の時間

下着を履いて服装と髪を整える。

何事もなかったかのように、私は部屋から出ようとすると、

「…あと、３週間くらいしたら妻は子どもと一緒に、戻ってきますよ」

その言葉に、血の気が一気に引いた。

指先から、震えてしまった。

自分から確かに聞いた質問なのに、返ってきた言葉にショックで。

好きになってしまったのに。

私は胸が痛くなった。

つらいよりも…苦しくなった。

なのに、

「…よかったじゃないですか」

肩を震わせながら、冷たくなった手をグッと握って、私は小さな声で呟いた。

私は、扉を閉めて足早に自分の部屋へと戻った。

私は耳に残る、翔の言った言葉の数々に涙した。

好き？って聞いたのは。

好きと言わせたのは。

私の名前を何度も呼んで。

私にあなたの名前を何度も呼ばせておいて。

キスをして、あんな事までして。

受け入れてしまうのは、好きだからなのに。

好き…。

好き…好き…好き…。

私は永津 翔が好き。

それを認めてしまったこの日から、私はもうあなた無しでは生きられなくなってしまった。

私は床に涙を落とした。

どうしよう…。

あと、３週間で戻って来る。

焦りながらも、嫉妬もしてる自分がいる。

私はこの先、一体どうなってしまうのか。

白々しく、他所の旦那と秘密を持ち続けて、このアパートにこれからも住み続けていくのか。

どんな顔して住み続けるの。

どんな顔して、翔の奥さんと子どもに会ったらいいの。

私は、なんて事をしてしまったんだろう。

なんて、感情を持ってしまったのだろう。

私は床に這いつくばって、涙を流す。

彼は、この下に居る。

今は一人でこの下に居て、今は誰の事を考えているのだろう。