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あなたが消えない
第8章 秘密の時間
幸せなのか、不幸せなのか、満たされているのか、満たされていないのか訳も分からず。

あの日から和男の休みの土日以外は、毎日私と翔は関係を持っていった。

101号室の玄関で。

201号室の玄関で。

その先の部屋には決して足を進めない。

お互いの奥にある生活を知りたくも、知られたくもないから。

玄関は薄暗く狭いから、二人の距離が更に近付き縮まる。

もの音を立てないように、静かに激しく二人の秘密の時間を快感し合う。

「翔…好き…」

そう抱かれながら言うと、何も翔は言わないけれど、満足そうな表情をする。

「…翼…」

私は翔のモノだよ。

翔を私だけのモノにしたい。

ダメ…?

私は目を細めて、挑発をするように感じながら求める。

けれど翔はそんな私を見つめながら、腰を激しく動かす。

好きって言ってよ…。

私だけのモノになってよ…。

例え、あなたに奥さんや子どもが居たとしても、心だけは私のモノになってよ。

私の心はもう、あなただけのモノなのだから。

「あぁっ…翔っ…」

おかしくなるくらい悶える。

本当に好きなのだ。

「…翼…俺ガ欲シイ?…」

「…翔っ…翔が欲しいよ!…」

下だけが感じる訳じゃなくて、睫毛が当たるくらい近い距離で囁くから、スラスラと言葉が出る。

「…翼ハ俺ノ何ガ欲シイ?…」

私は、ジッと見つめる翔の口唇にキスをして言った。

「翔の愛が欲しい…好きだと言って欲しい…」
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