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あなたが消えない
第12章 刻み込む
翌朝、私と翔は何喰わぬ顔をしてアパートへと戻った。

少し離れた場所で、私は車から降りる。

「ごめんな、こんな所までで」

「いいの、いいの」

「じゃあ、先に行くよ」

「うん。翔、ありがとう」

私は恥ずかしそうに照れて言うと、

「お礼を言われてもなぁ」

あれっ?もしかして、翔も照れてる?

「アルバイト、採用されて、正式に休みが分かったら知らせるね。翔には全部、誰よりも一番に知らせたいから」

「あぁ…」

優しく笑顔でうなずいてくれて、それだけでホッとした。

「翼…愛してる」

そう言って翔は、アパートへと車を走らせた。

私は翔の言葉を胸に温めながら、軽い足取りでアパートへと戻った。

すると、102号室の奥さんがゴミ出ししていた。

気まずいな。

翔も朝帰りして私も朝帰りは、さすがに疑われるかもな。

どうしよう。

「おはようございます」

私は、明るく声を掛けた。

「おはようございます」

「今朝はいい天気ですよね」

有りがちな会話で、はぐらかす。

「ですね」

……。

「じっ、実家に昨晩は泊まったんですけど、実家の方は天気が悪くて、洗濯モノが急に心配になって朝帰りしちゃいました」

私はうまくテンション高めに、ごまかした。

「あ、でもそれアタリですよ。午後から曇るみたいですよ」

「うわぁ、よかった」

すると、翔が仕事着に着替えて、101号室から出てきた。

もしかして、タバコ吸うため?

それとも私たちの会話が気になった?

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