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あなたが消えない
第14章 身勝手に抱く
「子どもなんて造らない!造る訳ないじゃない!あなたをこんなにも愛しているのに!欲しくないわ…そんなモノ要らないわよ!…私が欲しいのは…私が欲しいのは翔なの!…身勝手に抱いてくる翔が欲しいの!!…翔に身勝手に抱かれる自分が…一番幸せなの…当たり前じゃない!…うぅっ…うぅぅっ…」

私は嫉妬に狂った鬼女になっていた。

「だから?」

翔は泣き潰れる私に、それでも本音を引き出すように問う。

頭に浮かび、消えない言葉。

それを言ってしまっていいのだろうか。

それを言っても、答えは出てる。

だから、言えない。

答えを聞いて、傷付きたくない。

……。

沈黙は数分間も続いた。

翔は私が言うまで、黙ったまま。

……。

泣き続けて、涙がやがて途切れ、呼吸が整いはじめた頃には、気持ちも落ち着いてきた。

「翔、つらいから。奥さん戻って来たら、もうこの関係は続けてはいけれない。だから、もうこれっきりにして…」

私はそう翔に顔を向けると、翔は見た事もない表情をした。

何で…何でよ…!

そんな顔…しないでよ!

「嘘…嘘よ!…私は旦那と別れるから、翔も奥さんと別れて!…別れて…別れて欲しい!お願い、別れて…」

私は翔にしがみつき、込み上げる感情のままに、また泣き崩れた。

呼吸が乱れるくらいに、ひどい顔して泣いた。

翔は何も言わずに、キーを回してエンジンをかけた。

車を発車させる。

「妻とは…」

分かってる。

「別れない…」

分かってるけど。

「すまない…」

涙が止まらない。

「翼の本音には応えられない」

悲しくて、涙が止まらないよ!

「すまない」

翔は真っ直ぐ向いたまま、運転する。

……やっぱり、つらい。


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