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あなたが消えない
第14章 身勝手に抱く
「つらいか?」

窓の外を見つめながら、翔の言葉で涙が頬をつたう。

そんな私に、翔はまた聞く。

「なぁ、聞こえてる?」

最後まで聞かずに、私は答えた。

「つらい…この先、もっとつらい…」

翔は信号の先を左に曲がらず、右に急に曲がった。

…えっ?

ハンドルを大きく回して、また来た道を戻る。

「翔?」

私は翔を見つめると、ただ真っ直ぐに自分の決めた行き先だけを見つめていた。

「今夜は帰さない」

「そ、そんなの…」

それは、困るんだけど。

「帰したくないくらい、翼を愛してるから」

でも、私がとっさに思った事。

もう明日の朝、和男に罵られてもいい。

運転する翔の腕に私は、また強くしがみついた。

翔は私の頭を撫でて、そのまま自分の胸に寄せた。

その夜はホテルで、何度も何度も快感を味わった。

翔の全てで。

「もっと!…もっと抱いて!…もっと感じたい!」

「はっ…はっ…はっ…!…翼っ…あぁっ…あっ!…」

激しく翔は腰を動かす。

その姿に翔の愛を感じた。

一生に一度の、運命の出逢い。

心の底から敬愛して、本音を出せる信られる運命の相手。

「…あぁっ…っあん!あぁん!あぁぁん!…翔…愛してる!…」

「俺も愛してるよ!…愛してる!…くっ…んんっ!…」

愛してるけれど。

101号室の永津 翔。

その永津 翔は、他所の夫。

「…奥まで…奥まで!…あぁぁ!…入ってくるよぉ!…翔が!…」

「…すっげぇキモチイイ!…マジに…うっっ!…はぁぁっ!…あぁ!…たまんねぇよ!…翼の中!…」

とっくに何度も私はイッているのに、まだ欲しくて、もっと欲しくて、更に翔の硬いモノを中で擦られてイクのだ。

もうすぐ、別れられない程の妻と子どもを出迎える翔の硬いモノで。

獣と獣が荒れ狂ったように、汗と体液と唾液で、揺れるベッドは濡れていくのだ。

翔をメチャクチャにしたい。

翔を壊したい。

翔を狂わしたい。

奥さんなんかに、二度と愛を感じないくらいに。

奥さんなんか、二度と抱かないように。
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