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モーニングコーヒー
第9章 レベル9〜りんさんのスペック、あるいは思いもよらないスキル
翌日は約束通り、秀人を道場に連れて行くことにした。
りんさんもついて行きたいと言う。

実家に立ち寄って久し振りに竹刀や剣道着やら諸々、
出してみたけど、
なんとなく黴臭い。


「今日はご挨拶だけにしたら?
これ、持ち帰ってお洗濯し直しましょう?
秀人のも買わないといけないから、
なんなら、新しいのを買っても良いし」と笑いながら、
りんさんはなんだか懐かしそうな顔でそいつらを撫でている。


そして、
「住んであげないとお家、可哀想ね?
空気の入れ替えだけでも来ないと…」と言った。


途中、百貨店に立ち寄り、
虎屋の羊羹を買って道場に向かった。


既に大先生はほぼご隠居されてて、
俺達が若先生と呼んでいた息子さんが1人で道場を見ているそうだった。

電話をしていたので、
道場に連なるご自宅の呼び鈴を押して、
中に入った。

怖くて堪らなかった大先生は、
2回りくらい小さくなっていた。


そのまま、和室に通される。

りんさんが紙袋から羊羹を出して、
「こちら、お好きでしたよね?」と言うと、
大先生は皺くちゃの顔を更に崩しながら、

「おお!
鈴ちゃん!
久し振りだのう」と嬉しそうに笑った。


えっ?
なに、この展開?


「なんだ。
駿介と知り合いだったか?」


ん?
俺の方が、
お付きの人ってこと?


りんさんは少し恥ずかしそうに、
「あの…実は先だって入籍したんです」と言うと、
大先生は目を丸くして俺を見る。


「おや?
随分と歳が離れてるんじゃないのかな?
まあ、良いのか。
鈴ちゃんは可愛いしな」


「あの…。
大先生、ご無沙汰して申し訳ありません。
りんさんとはどういう…?」


「会ったこと、なかったかいのお?
鈴ちゃんは同門だから、
お前の姉弟子だよ?」


「え?
ええっ?」


「先生、多分面識はなかったと…。
私、高校を卒業した後、
留学してしまってこちらには来れなくなりましたし、
その後は結婚してしまったので…」


「おお。
そうだったか」


「あの…。
それで、私、離婚しまして…」


「そんなの、今時、普通だろう。
わしも、時代が違っていれば、
何度も離婚と結婚を繰り返していたよ」と笑うけど、
仲良しの物静かな奥様とずっと連れ去っていたのを知っていたので、
りんさんと顔を合わせた後、
笑ってしまった。
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