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近くて遠い
第17章 偵察
「こんなの考え出しちゃうなんて、本当にすごいですね。酒田さんも尊敬するって…」


斜め後ろに顔を上げて、私は光瑠さんを眺めると、遠くを見つめる静かな表情にハッとした。


北から吹く風に、光瑠さんの柔らかな髪をなびく。


「尊敬されるようなことはしてない。」



「え…?」



光瑠さんは静かに語り出した。



「もとは俺を置いて逝った父へ腹いせに始めた。」


光瑠さんはどこかに憂いに満ちた瞳で遠くを見据えていた。



──────噂によると大切な人を次々に亡くしたらしいわ…



少し前に聞いた幸ママの言葉が頭をよぎった。


光瑠さんは
依然として遠くを見つめたまま、ゆっくりと口を開いた。


「俺の母は、愛人と逃げようとしたときに事故にあって死んだ。
笑えるだろう。自業自得ってやつだ…」


「……」


光瑠の笑いは乾いていて、私には悲鳴じみて聞こえた。


「父はその事実に堪えられず、あの家で首を吊った。自殺だ。俺が発見した。」



「っ…!?」



淡々と発する光瑠さんの衝撃の告白に私は絶句した。


自殺…?


光瑠さんが発見したって…

この人は
親が首を吊っている姿を見たの…?


ダメだ、私には想像できない。


立て続けにそんな形で肉親を失った光瑠さんがどんな気持ちだったかなんて…

私には…。

「そのあと……っ…」


光瑠さんは何かを言いかけて、唇をワナワナさせると、私を後ろからぎゅっと抱き締めた。


震えてる…


涙は流していなくても


彼の心は涙を流している。


「去っていった。
みんな…」



──────孤独……なのね




彼は


孤独でいるをひどく恐れているのだ。



「光瑠さん…」



気付いたら、
話を聞いている私が涙を流していた。


そして
私の首の前で交差した光瑠さん手を私はひたすら撫でた。





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