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近くて遠い
第18章 時計が狂う
ゴーーン──…



と至る部屋から時計の音が響く。



あぁ、


これは、


何時を知らせているんだろう…



そんな事を考えて、


私は必死に日常を取り戻そうとする。



「やはり、どこかひどく怪我をしているんじゃっ!」


何も答えない私に、

カナメさんは再び動揺して古畑さんに顔を向ける。



「真希様、大丈夫ですか…?」


心配そうに、古畑さんが私を見た。




「………だい…じょうぶです…」



大丈夫じゃなかった。



今何が起きてるのか、


誰か、


私に教えて…



「良かった…本当に申し訳ない…」


間違いない…


目の前にいるのは


あの雨の日に出会った


彼だ…


でも、その時から彼は


見えていなかったの……?


「……私が、走っていたから…だから…」


もう身体の痛みを感じなかった。


ゆっくり立ち上がって、


隣にあったステッキを掴む。



目が合わない…

綺麗な瞳は、何も写していない…



「……もしかして、真希さんって…」



としばらく固まってカナメさんが言葉を発した。



ドクンと胸が鳴る。



「有川社長の…」



「そうです」



と古畑さんが答えた。




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