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近くて遠い
第19章 運命
───────…

傾いた太陽が眩しくて、光瑠はカーテンを閉めた。


心は穏やかで、
とても満ち足りている。


ふぁっと欠伸をして、ソファーに腰掛けた。


心地よい眠気。


今目を閉じたらすぐに眠ってしまうな…


そんなことを思いながら、一人静かに来客を待つ。


一人になって
思い出すのは決まってあの小さな少女のことばかりだった。



──────もう死にたいなんて言わないでくださいっ


言うわけない。


と光瑠は再び心の中で呟いた。



葛藤はあるものの、光瑠は前向きだった。


未来を…信じてみたくなっていた。



大丈夫だ。

真希は…
どこにも行かない…


コンコン───…


とノックの音が響く。


「光瑠様、関根様がご到着になられました。」


来たか…


「入れ。」


光瑠は古畑の声に返事をして、大きく息を吸った。



「ご無沙汰しております…」


変わらぬ部下の姿に光瑠は安堵した。


「……無事で良かった」


光瑠はそう言葉を洩らすと、古畑に目配せをして、自分の向かいのソファーに座るよう促した。


ステッキをカタカタと振り回して、確めるように前を進む要。


変わらぬ姿…

とは言えないな…



「具合はどうだ」


やっと腰を下ろした要に早々に光瑠は言葉をかけた。




「2ヶ月もお休みをいただいたお蔭ですっかり良くなりました。」


「……そうか」


視線の合わない会話。

じわじわと罪悪感が込み上げる。


「その…やはり…」


「ええ。眼は…ダメみたいですね。」


聞きにくい質問を要はすかさず汲み取って返事をした。


「すまなかった…」


込み上げる思いから出た言葉に、要は目を見開いた。


「何故社長が謝りますか。」


「あの日…あんな雨の日に呼び出さなければ…」



「事故には合わなかった…と?」


彼は光瑠の言いたいことが分かっている。

そうだ彼は…勘がいいのだ。


だから、光瑠はまだ入社して半年の要を二年前、秘書にした。
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