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近くて遠い
第19章 運命
「先ほど廊下でお会いしました。」


「……真希に?」


「えぇ、ぶつかってしまって…怪我をしていないか心配なのですが。すぐに走って行ってしまって…」


そう言って要は申し訳なさそうな顔をした。


すぐに走って行った…?


急ぎの用でもあったのだろうか…。


「とても美しい方だとか。」


「っ……」


光瑠は照れくさくて答えに困った。
真希のことを人に話すのは慣れない。



──────光瑠さんにとって…私は……なんでしょうか……



まだあやふやな関係。

大事なのは確かだ。

でも自分にとって、真希が何なのか、言葉に出来ずにいる。



「照れていらっしゃるんですか?」


「っ…違う!」


また心を読まれたような気分になる。


ククっと喉を鳴らして笑う要をみて、光瑠は頭を掻いた。



「社長をそんな風にさせてしまう女性を見れないのは残念だ…」




先ほど光瑠が要に対して思ったのと同じように要が言った。


「俺は変わらない。
いつも通りだっ。」



「そうですか…」


また見透かしたように要が笑う。



ゴロゴロ───…


窓の外から不穏な音が鳴る。



「雨ですね…」



「みたいだな…」



ザー…ザー…


激しく雨が地面を打つ音が響く。



雨が降る───



権力



過去




全てが複雑に絡んで



三人の運命を


少しずつ狂わしていく…



この先に何があるのか…



まだ誰も知らない…



ただ、


ひたすら、


雨が降るのみ…
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