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近くて遠い
第19章 運命
なんて下心満載なんだろう…


大した額じゃない。
何も言わずにあげてしまえばいいのに、高鳴る鼓動がそれを許さなかった。


「ありがとうございますっ…」


そんな要に彼女は健気に頭を下げた。



「いいって。そんな頭下げるな。
俺も…その方がいいからさ。」


少し、後ろめたさを感じたせいで本心が洩れる。


まずい…



彼女をみると、案の定きょとんとした顔をあげた。



「あー…
えっと…ほら、また君に会えるってことだろ…?」


要は少し照れたように頭をかく。


バカだ…


これじゃあ告白してるも同然じゃないか…

そんなことを心で思いながら、要はじっと自分を見つめる彼女の強い瞳に吸い込まれそうになった。



「あ、あのさ…」



そう言って要は傘の中に入った。



ドキドキドキドキ…
と心臓がうるさい。


二人の顔がどんどんと近付く。

要は少女の小さな唇をじっと見つめた。


知りたい…


もっと…

彼女を…


「君の…」




「要様!!!!!
呼んで来ましたよ!ほらもう大分時間をロスしてしまった…」


斎藤の慌てた声に要はハッと我に返った。


急に現実に戻され頭を振った。


「……あぁ…分かってる、行くよ」



「何怒ってるんですか…ってびしょびしょじゃないですか!!もぉ…どうするんですか!その姿で有川様にお会いになられるんですか?!」


大きな声が道に響いてこだまする。


「……仕方ないだろ。」


そう斎藤に言葉を返すと、要は再び少女をジッと見つめた。



「また会おう。ちゃんと傘さして帰るんだぞ。」


そう微笑んで要は少女の頭を撫でた。



またいつか…


必ず………



そして要は斎藤にやいやい言われながら、車に乗った。



「何ですか、あの娘は…」

慌ただしくドアを閉めながら斎藤が尋ねた。



「まだ鳴り止まない…」

「は?」


要は自身の胸に手を当てて大きく波打つ鼓動を感じた。


最後、

俺は一体何をしようとした…?



あの小さな唇に魅入られて…

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