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近くて遠い
第22章 距離
長い黒髪が枕の上で少し乱れ、布団をギュッと握りしめながら、スヤスヤと眠る、小さな少女…



「よかった……」



自分のベッドで熟睡する真希の姿を確認した光瑠は、急に緊張から解き放たれて、脱力して床に膝をつけた。


無事だった……


光瑠はしばらくそのままの体勢で息をつくと、
ふらつく身体を起こして再び真希の姿を見る。



だが、何故ここに……?



小さく揺れる頬を指で軽く撫でた。


布団をギュッと握って抱き締めているその姿は、何だかとてもあどけなくてかわいらしく光瑠には見えた。


自分もそこに身を横たえようとするが、起こしてしまいそうで戸惑う。

そしてチラとソファーを見た。


今日はあれで寝るか…



そう決めた光瑠は、まだ脱いでいなかったスーツを脱ぎ、ゆったりとした部屋着に着替えると、再び真希の傍に行った。



ずっと見ていても飽きない…


そう思ってゆっくりと唇を近付けようとした。


「ん…ひかるさん……」



寸前のところで寝がりを打ちながら、自分の名前を呼ぶ真希にドキッと光瑠の胸がなる。


起こしたかと顔を見るが瞼を閉じたまま瞳が動いているだけで、起きた様子はない。


夢か…



光瑠は身体が熱くなるのを感じた。



自分の部屋で眠り、自分の名を呼ぶ真希…


寝ていてもこいつは俺を煽ってくる…



堪らなくなって光瑠はつい、フっと声を出して笑った。




「んんっ………ふぅ…あ…」


光瑠の微かな笑いに、真希が敏感に反応して目を開けた。


まずいっ…


起こしてしまったと口に手を当てるが、真希は寝ぼけ眼で光瑠をじっと見つめると、突然状況を把握したように大きく目を見開いた。


「すまない…起こし──」


「光瑠さんっ!」



真希は光瑠の言葉を遮って、光瑠の首に腕回して力強いっぱい抱き締めた。


「……!?」


突然のことに光瑠は驚いて声が出ない。


それどころか、いきなり首を掴まれバランスを崩して真希の身体に顔を埋めていた。
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