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近くて遠い
第22章 距離
「ま、真希っ…苦しっ」


「あっ…ごめんなさいっ!」


光瑠の苦しそうな声にハッとして真希は腕をほどいた。


「ふぅ…」



顔を上げて息を吐くと、自分の服の端を掴みながら、真っ直ぐ見つめてくる真希に光瑠は戸惑った。



「お、お前、なんでここにいるんだ」


心配した──という言葉を光瑠は何故か飲み込んだ。



「ごめんなさい…眠るつもりはなかったんですけど…」


訳の分からない真希の言葉に光瑠は首を傾げる。


「なんか俺に用か……?」


久しぶりに起きてる真希に会う…。

体温が熱くなって行く。

身体が喜んでいるようだ…。



「用っていう用はないんですけど…」


要領を得ない真希の言葉を光瑠はちゃんと聞いていた。


尚もギュッと服の端を掴む真希がとてもかわいらしい──


「じゃあなんだ?」



少しうつ向く真希の顎を光瑠はクイッと上に持ち上げた。


揺れた大きな瞳に自分の姿が写っている。



「だってっ…何も言わないで3日も会わないなんてっ…!」



次第に涙が溜まっていくのを光瑠はじっと眺めていた──


3日"も"という些細な言葉の表現が光瑠を喜ばせる。



「会わないなんて…?」



光瑠はそう真希に続きを促して視線を瞳から唇に落とした。


「っ……」


ギュッと引き結ばれた小さな唇…



「どうした…?」


あと数センチのところまで唇を近付ける。



「っ………寂しいです…っ」



「……んっ…」



真希はそう叫ぶと自分から光瑠の唇を塞いだ。



再び真希の大胆な行動に驚きながらも、そのキスを受け入れて、真希の後頭部に手を添えるとゆっくりと舌を絡ませていった。



久しぶりの真希の舌──



しかも真希の方から自分を求めてきた──


3日会えなくて



──────寂しいです…っ



聞いたばかりの言葉が頭で何度も繰り返される。


じわじわと身体の先まで血が巡るのが分かった。


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