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近くて遠い
第23章 信頼関係
「いないねぇ…」



「きっと忙しいんだよ。」


残念がる隼人の言葉に答えながら私は内心ホッとしていた。


もしいたら…なんてドキドキしていた自分が恥ずかしい。



要さんは私を社長の婚約者としか思っていないし、大切な人がいる素振りだったのだし、やはり私が意識しすぎだったんだろう。



「でも、かなめは来るって言った!!」



拗ねる隼人の頭を私は撫でた。


「仕方ないでしょ?光瑠さんだって隼人全然会ってないでしょ?今みんな忙しいんだよ。」


納得いかない様子で隼人は口を尖らしたままだった。



風が運んだ枯れ葉が隼人の前に落ちてきて、隼人がそれを踏んだ。


「つまんない。明日もここに来る!」



「……わかったから。」



私の返事を聞くと隼人は庭の奥まで走っていった。



私は要さんと座った白いベンチに腰掛けて、じっと目を瞑って音だけの世界に入り込んだ。



──────視覚のない世界は欠如の世界じゃありません



本当に、その通りだ。



目を開けてしまったら気付けないものが、目を閉じることで現れる──


空気の匂い。


自然が発している声。


冷たい空気が私を取り巻いて…。



誰かの足音…



そして、ふわりと温かい何かが私を包む──
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