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近くて遠い
第23章 信頼関係
「光瑠さんっ!!」


キッと私が睨み付けると、光瑠さんは、うっと身体を固めてがしがしと頭を掻き始めた。



「あぁっ、ったく!」


泣き止まない隼人の隣で光瑠さんが声を上げて立ち上がる。


「分かったっ……!分かったっ!遊んでやるから泣くな!耳障りだっ!」


髪をボサボサにしながら光瑠さんが叫ぶ。



「ほんとにー!?」


隼人はその言葉に反応して、今までの号泣が嘘だったかのようにニコニコし始めた。


「っ…5分だっ!それ以上は遊ばんっ!」


日本…いや世界にも名を轟かせる有川商事の若社長、有川光瑠が8歳児の涙に狼狽している…


「じゃあ鬼ごっこね!ひかるが鬼!10数えたらスタートねっ!」


そう言って隼人は私から離れて一目散に走り出した。



「あ、おいっ、なんで俺が鬼なんだっ…」


「光瑠さん、10数えないと。」




走り出そうとする光瑠さんを制すと、光瑠さんは分かってるっ!と叫んで数字を数え始めた。


私はそれがおかしくてクスクス一人で笑っていた。



「っ…何笑ってんだっ!」

「だって…」



8歳児にあんなムキなっちゃって…。


顔を紅くして光瑠さんが私に近付く。



「光瑠さん、ほら、もう10になりましたよ。」


「っ…!」


「あっ、光瑠さんっ」



思いっきり走り出そうとする光瑠さんを止めると、なんだっ!と振り返った。



「手加減してください。相手は8歳ですから。」



ちょっと意地悪くいうと、余計に光瑠さんが顔を紅くするから、私は笑いを堪えるのに必死だった。



「言われなくてもそれくらい分かってるっ!」


うそつき。

すごい勢いで走り出そうとしてたくせに…



フラフラと隼人を追い掛ける光瑠さんを見ながら、私は一人で笑っていた。



────────俺はガキが嫌いだっ!


そんなこと言いながら、不器用な優しさで隼人と接してる。


走り回ってる隼人と光瑠さんが親子みたいに見えた。


でも…


「中身は変わらないか…」


一人でそう呟きながら、私は大きく息を吸った。



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