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近くて遠い
第25章 符合
────────…
微かに自分の鼓動が速まっているのを感じながら、要はゆっくりと外へ出た。
──────少し時間があるようなら庭に行ってやって来れ
そう社長に言われた時、少し後ろめたいような、複雑な気持ちが胸の中に渦巻いた。
分かりました、と返事をして再びスイーツを用意すると、要は空いた時間に庭へ向かっていた。
冷たい空気が運ぶ太陽の香りを嗅ぐ。
今日はきっと青い空が広がっているに違いない──
要の頭の中で雲一つない澄んだ青空が広がる。
そして、どうして見えていた時にもっとその光景を焼き付けなかったのだろうか、と後悔した。
思わず、ステッキを握る力が強くなる。
医者が放った言葉もまた要を苦しく締め付けていた。
見えないことをなるべく前向きに考えようと、たくさんの言葉を探して、他の感覚を研ぎ澄ませて…
そうやって、やっとその人生を受け入れ始めたばかりだったのに、もしかしたら見えるようになるかもしれないという事実はその要が築いたものを一気に壊した。
見たい。
もう一度。
当たり前だと思っていたあの光を…
もう一度感じたい。
抑えていたものが、一気に溢れ出て、止まらなくなっていた。
自分は何て弱い人間なんだろう──
また見たいと思いながらも、その事に自分の命を賭ける勇気もなくて、ただただ見たいという欲だけが募る。
いっそ、眼球もなにもかも取り返しがつかないくらい傷付いてしまえばよかったのに…
そうすれば、こんな思いになることはなかった…
そんなことを考えてしまう自分が嫌で仕方がない。
グッと奥歯を噛んだあと、要は小さく息を吐いた。
微かに自分の鼓動が速まっているのを感じながら、要はゆっくりと外へ出た。
──────少し時間があるようなら庭に行ってやって来れ
そう社長に言われた時、少し後ろめたいような、複雑な気持ちが胸の中に渦巻いた。
分かりました、と返事をして再びスイーツを用意すると、要は空いた時間に庭へ向かっていた。
冷たい空気が運ぶ太陽の香りを嗅ぐ。
今日はきっと青い空が広がっているに違いない──
要の頭の中で雲一つない澄んだ青空が広がる。
そして、どうして見えていた時にもっとその光景を焼き付けなかったのだろうか、と後悔した。
思わず、ステッキを握る力が強くなる。
医者が放った言葉もまた要を苦しく締め付けていた。
見えないことをなるべく前向きに考えようと、たくさんの言葉を探して、他の感覚を研ぎ澄ませて…
そうやって、やっとその人生を受け入れ始めたばかりだったのに、もしかしたら見えるようになるかもしれないという事実はその要が築いたものを一気に壊した。
見たい。
もう一度。
当たり前だと思っていたあの光を…
もう一度感じたい。
抑えていたものが、一気に溢れ出て、止まらなくなっていた。
自分は何て弱い人間なんだろう──
また見たいと思いながらも、その事に自分の命を賭ける勇気もなくて、ただただ見たいという欲だけが募る。
いっそ、眼球もなにもかも取り返しがつかないくらい傷付いてしまえばよかったのに…
そうすれば、こんな思いになることはなかった…
そんなことを考えてしまう自分が嫌で仕方がない。
グッと奥歯を噛んだあと、要は小さく息を吐いた。