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近くて遠い
第26章 糸の綻び
────────…

「お母さん!!!」


一目散に走って、私は勢いよくドアを開けた。


そこには光瑠さんがつけてくれたお医者さんと、お母さんの布団を直す看護婦さんいて、びっくりして私を見ていた。



「お母さんっ!お母さんはっ!」


自分でも、どうしていいか分からないほど取り乱して、息が上がったまま倒れ込むようにしてお母さんのベッドまで行った。



「真希様っ…!」



後ろから追い掛けてきた愛花ちゃんが私の肩を掴む。


顔を上げて一生懸命お母さんの顔を見ようとするが、涙が邪魔して視界がぼやける。


「お母さんは……お母さんは…」


まるでうわ言のようにその言葉だけを繰り返した。



「真希様……」



お医者さんが近付いて来て、私を優しく見下ろした。


「お母さんはっ…」


私はそれだけ言って、そのお医者さんの足にすがり付いた。



「………先ほど、吐血されて…今は薬で安定しています。」



お医者さんは私の背中を擦りながら、静かにそう言った。




「はぁっ……っ…」


安定していますというその声に全身の力が抜けて、私は声を出して泣いた。



「……」



愛花ちゃんが床に崩れた私を抱き上げて、その小さな身体でぎゅっと私を抱き締めた。




しばらくして落ち着いた私は、ふらふらと立ち上がってベッドの脇にあるいつも座っているイスに座った。


いつもと違った器具に繋がれたお母さんは心地良さそうに眠っていた。


解れそうな糸をピンと張っているような、そんな危うさがあって、この前の弱気なお母さんの発言が急に現実味を帯びる。



私は血管の浮き出たその細い手を握って、再び涙を浮かべた。



「真希様……今は薬で安定していますが、またいつ同じ事になるか分かりません。」



分かってる。


本当は……。




「嫌です…」



お母さんの顔を見ながら、涙声で答えた。

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