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近くて遠い
第26章 糸の綻び
───────…

廊下を歩いているととてつもない悲鳴が聞こえて、メイドと要は息を飲んだ。


この声は、真希さんっ…




「君、急いで!」


「は、はい。」



少し小走りで悲鳴が聞こえた方へと進む。


何があったのか…心配と不安が入り交じりながら要は進んだ。



メイドが扉を開けると薬品の匂いがして、何人かがすすり泣く声が聞こえる。




「いやぁっ!!お母さんっ!お母さんっ!」



その中で激しく泣き叫んでいる声が響く。



導いてくれたメイドも中に入って、はぁっと息を飲んでいた。



「真希さんっ!」



要は泣き叫ぶ声を頼りに真希に近付いた。



「関根様っ!」




そう愛花が言ったのを要は聞いて、すぐに先日のメイドの声だと分かった。



「何があったっ!!」


手をフラフラと動かしながら、要は真希を探す。


「お母さんがっ…!お母さんがっ!」


仕切りにそれだけを叫ぶ真希の頬に手がぶつかって、要は真希を抱き締めた。



「真希さんっ……!」



カラン───とステッキが落ちたのも気にせずに、ひたすらむせび泣く真希を要は強く抱き締めた。



「真希様のお母様がっ…先ほどっ…先ほどっ…」



「もう分かった。それ以上言うな…っ」


要は愛花の言葉で事情を察してその先の言葉を制すと、ひたすらお母さんがと叫ぶ真希を抱き締めた。



もう誤魔化せない想いが要の身体の奥深くから涌く。


愛しい───


自分が守りたい──



持つべきでない気持ちが止めどなく溢れて、真希を抱き締める力を強くさせる。



「僕がいるっ……」



そう真希の耳元で囁いた要の言葉は周りの皆には届かないほど、真希の泣き声が大きく部屋に響いていた。

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