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第26章 糸の綻び

─────────…

その頃、光瑠と酒田は新プロジェクトの打ち合わせに外に出た帰りの車の中だった。


会社に戻ればまた膨大な仕事が待っている。


結局あれから真希とは顔を合わせていない事は、光瑠を悶々とさせていた。


だからと行って家に戻る時間はない…


もどかしく思いながらも、束の間の移動時間、光瑠は少し眠ろうと長い足を組んだ。



「うわぁっ、すごい着信数だっ！」



寝入ろうとしたその時、酒田の大きな声に光瑠は身体を震わせた。


「ったく…うるさいやつだな…」


そう思いながらも、光瑠は自分もケータイの電源を切ったままだったことに気付いてポケットに手を入れた。



「しゃっ、社長！」


「うるさい、充分聞こえるから静かに話せ！」



自身のケータイの電源を入れながら、また大きな声を出した酒田に光瑠は少しきつめに言った。



「大変です！真希様のお母様がっ」



ふぅっと溜め息をつこうとした瞬間、光瑠は真希という言葉を聞いて、動きを止めた。



「っ…なんだっ！どうした！」


酒田に光瑠は身を乗り出した。


「さっ、先ほど、亡くなられたとっ…」



「っ……！？」



光瑠が大きく目を見開くと、光瑠のケータイがけたたましく鳴った。


急いで確認すると、何件もの着信に、メールが届く。



「真希っ！」


光瑠はそう叫ぶと、運転を早めるように前方に言った。



車が家に近付いたとき、そわそわとして頭を抱える光瑠に酒田はゆっくり話し掛けた。



「社長…、こんなときに言うのも難なのですが、夜の最終会議には社長がいていただかなければ──」



「……黙れっ！」



光瑠は顔を上げるときつく酒田を睨み付けた。



「自分が酷な事を言っているは分かっています！」


そんな光瑠に酒田は屈せずに言い返した。


「お前がやっとけばいいだろ！」


「もちろん僕が出来る事は、最大限します！ですが…」


社長の代わりはいません！────と酒田が叫んだのを聞いて、光瑠は言葉を詰まらせた。


どうにもならぬトップの位置。


そんなもの、いらない。


今は邪魔なだけだ……


真希っ…