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近くて遠い
第27章 出発
───────…
お経を読み上げる抑揚のない声。
身体に染み付いた線香の香り。
光瑠さんが発ってから3日後、ほとんど有川邸の人々だけで、しめやかにお母さんのお葬式が行われていた。
頭がぼんやりとして、ずっと夢の中にいるようなそんな気分だった。
お母さんが死んでしまったということをどれくらい理解しているのか、隼人は、ずっと黙ったまま私の傍を離れない。
私はお葬式の準備をしながら、ただ目の前にあるものをぼんやり眺めている事しか出来なかった。
「真希さん…」
私を心配してくれている要さんは毎日のように私と隼人のところに来て、美味しいお菓子を持って来てくれる。
お葬式の事も、要さんが相談に乗ってくれたお蔭ですんなりと行う事が出来た。
「本当に、ありがとうございます。」
納骨から何まで全てが終わったあと、お墓の前で私は要さんにお礼を言った。
「いいえ。」
そう言って見せる笑顔に私はとても癒されていた。
要さんはいつも私が弱ってさまよっている時に現れる…
もうこうやって何度、彼に助けてもらったんだろう。
「一段落ですね。」
「ええ。」
要さんの言葉に返事をしながら、お墓を見た。
忙しくて、色々な事を、やっていたせいで、悲しむ暇がなかった。
だけど全てが落ち着いた今、本当にお母さんが逝ってしまったことをしみじみ感じて悲しみが湧いてくるのを感じた。
光瑠さんが帰ってくるまで、まだ何日もあるのに……
会いたい──
早く…
早く抱き締めてほしい…
「お姉ちゃん?」
繋いでいた手を隼人が引っ張った。
「隼人っ…」
涙が滲んで隼人の顔がうまく見えない。
隼人の前では泣くまいと決めていたのに、もう取り返しがつかないほど目に涙が貯まってしまった。
お経を読み上げる抑揚のない声。
身体に染み付いた線香の香り。
光瑠さんが発ってから3日後、ほとんど有川邸の人々だけで、しめやかにお母さんのお葬式が行われていた。
頭がぼんやりとして、ずっと夢の中にいるようなそんな気分だった。
お母さんが死んでしまったということをどれくらい理解しているのか、隼人は、ずっと黙ったまま私の傍を離れない。
私はお葬式の準備をしながら、ただ目の前にあるものをぼんやり眺めている事しか出来なかった。
「真希さん…」
私を心配してくれている要さんは毎日のように私と隼人のところに来て、美味しいお菓子を持って来てくれる。
お葬式の事も、要さんが相談に乗ってくれたお蔭ですんなりと行う事が出来た。
「本当に、ありがとうございます。」
納骨から何まで全てが終わったあと、お墓の前で私は要さんにお礼を言った。
「いいえ。」
そう言って見せる笑顔に私はとても癒されていた。
要さんはいつも私が弱ってさまよっている時に現れる…
もうこうやって何度、彼に助けてもらったんだろう。
「一段落ですね。」
「ええ。」
要さんの言葉に返事をしながら、お墓を見た。
忙しくて、色々な事を、やっていたせいで、悲しむ暇がなかった。
だけど全てが落ち着いた今、本当にお母さんが逝ってしまったことをしみじみ感じて悲しみが湧いてくるのを感じた。
光瑠さんが帰ってくるまで、まだ何日もあるのに……
会いたい──
早く…
早く抱き締めてほしい…
「お姉ちゃん?」
繋いでいた手を隼人が引っ張った。
「隼人っ…」
涙が滲んで隼人の顔がうまく見えない。
隼人の前では泣くまいと決めていたのに、もう取り返しがつかないほど目に涙が貯まってしまった。