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近くて遠い
第27章 出発
「隼人、おいで。」
涙が零れそうになる直前に要さんが横から手を伸ばして隼人を呼んだ。
「なにー?」
首を傾げて隼人は要さんの手を掴んだ。
「隼人は男だろ?」
「うん。」
「……これからは、お姉さんを守ってやらなきゃダメだぞ。」
その優しい言葉にポロっと粒になった涙が落ちた。
「分かってるよー!」
ニコニコしながら要さんを見つめる隼人──
全てが無くなった訳じゃない。
私にはまだ隼人という、大切な宝物がある…
「偉いな。」
要さんわしゃわしゃと隼人の頭を撫でるとステッキを隼人に持たせた。
「よいしょっ!」
「わぁあっ」
要さんは意図も簡単に隼人の身体を抱えて持ち上げた。
「お前結構重いんだな。」
ニカッと笑う要さんに隼人がステッキを持ったまま無邪気に笑った。
「ケーキ食べるか?」
「食べるー!」
そんな平和な会話を私は少し頬緩めて見ていた。
「真希さんも」
「あっ、えっ?」
隼人を抱えたままクルッと振り返った要さんと目が合ってドキッと胸が鳴った。
その瞳は見えていないはずなのに、しっかりと私を捉えていた。
「ケーキ、食べましょう。」
この人はどこまでも優しい…
「はい。」
私はそう返事をすると、要さんを誘導しながら、
ゆっくりと前へ進んだ。
涙が零れそうになる直前に要さんが横から手を伸ばして隼人を呼んだ。
「なにー?」
首を傾げて隼人は要さんの手を掴んだ。
「隼人は男だろ?」
「うん。」
「……これからは、お姉さんを守ってやらなきゃダメだぞ。」
その優しい言葉にポロっと粒になった涙が落ちた。
「分かってるよー!」
ニコニコしながら要さんを見つめる隼人──
全てが無くなった訳じゃない。
私にはまだ隼人という、大切な宝物がある…
「偉いな。」
要さんわしゃわしゃと隼人の頭を撫でるとステッキを隼人に持たせた。
「よいしょっ!」
「わぁあっ」
要さんは意図も簡単に隼人の身体を抱えて持ち上げた。
「お前結構重いんだな。」
ニカッと笑う要さんに隼人がステッキを持ったまま無邪気に笑った。
「ケーキ食べるか?」
「食べるー!」
そんな平和な会話を私は少し頬緩めて見ていた。
「真希さんも」
「あっ、えっ?」
隼人を抱えたままクルッと振り返った要さんと目が合ってドキッと胸が鳴った。
その瞳は見えていないはずなのに、しっかりと私を捉えていた。
「ケーキ、食べましょう。」
この人はどこまでも優しい…
「はい。」
私はそう返事をすると、要さんを誘導しながら、
ゆっくりと前へ進んだ。