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近くて遠い
第27章 出発
グラスの中で弾ける泡を光瑠は艶めいた目で見ていた。


あの唇に触れたい…あの小さな唇に──



アルコールで高まった身体が、光瑠を次第に雄にする。


もうずっと真希を抱いてない──


忙しかったのももちろんだが、何となく安易に抱けないと最近は思うようになっていた。


それは、力付くで手に入れようとしていた頃に比べると驚くほどの心境の変化だ。



「そろそろ部屋に戻りましょう。社長も目がすわってきてますよ。」



「ん。」


それだけ答えると光瑠はグラスに残ったワインを一気に飲み干して立ち上がった。



「明日は唯一街に出る時間がありますけど…どうします?ゆっくり休まれますか?」


エレベーターに乗りながら、問い掛けてくる酒田の言葉を光瑠は何となく聞いていた。


「社長?」


応答のないフラフラした光瑠の顔を酒田が覗く。



「街に出る。」


呂律が回ってないとまでは言わないにしても、少したどたどしい口調で光瑠は答えた。



「買わなきゃならないものがある。」


「……?」


光瑠の言葉に首を傾げながらも、分かりましたと返事をして、光瑠が部屋に入るのを酒田はしっかりと確認した。

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