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近くて遠い
第1章 雨に打たれて
空を見上げて


月を眺めた。




雲がかかってる──



ボヤッと光る月をじっと見つめていると、頬にポツリと滴を感じた。



雨か。




そうかと思えばポツポツと次第に雨は強くなった。



雨は好き。


神様が、私をキレイにしてくれるような気がするから。





そして、私はそのまま足を早めることなく歩き続けた。



久しぶりにこの道通るな…



昼間は人通りが多い商店街の道。


軽く目を瞑ると『真希!』と自転車に乗りながら梨子が私を呼ぶ声が聞こえてきそうだった。



思い出に浸ってる場合じゃないか……



ゆっくりと目を開けて、私は再び歩き出そうとした、その瞬間、けたたましいバイクの音がしたと思ったら、グィッと肩を持っていかれた。



「きゃっ!」



訳がわからないまま咄嗟に声を上げると、バイクの運転手は私のカバンをふんだくって、そのまま消えていった。



恐怖で声が出ず、何が起こったのか理解するのに時間がかかった。
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