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近くて遠い
第1章 雨に打たれて
ひったくり……?
やはりどこを見てもカバンがないことを確認してようやく事態を把握した。
その時、ずっと工事現場で立っていた疲れがどっと出るのを感じた。
しばらくあのお金でどうにかなると思ったのに…
時間をかけ、身体がボロボロになるまで働いて、そしてよくやくもらったお金を、今一瞬のうちに奪われた。
驚きと虚しさとじわじわと痛む足を感じながら、私は泣くことすら出来なかった。
さっきまで優しかった雨までもが、激しく私を打ち付ける。
帰るしかない…
手ぶらで?
明日のご飯、いや夜ご飯どうしよう…
また明日すぐに日雇い探さなきゃ。
頭がごっちゃになりながら、私はようやく歩き始めた。
「えぇ~や〜〜」
突然背後から雨に紛れて歌声が聞こえだし、私は思わず振り返った。
多分酔っぱらっているのだろう、フラフラと陽気に歩く中年の男が目に入った。
私も酔っ払えたら、あんな風に楽しい気分になれるのだろうか。
しかし、今の私にはお酒を買うお金すらない。
「ハッハッハッハッ~~」
「っ!大丈夫ですかっ?」
今度は突然笑い出したその男は、身体を大きく揺らしたかと思うと、派手に前のめりに転び、私は咄嗟にその男に駆け寄った。
「んー」
呻くだけで顔を上げない男を私は、トントンと背中を叩いた。
それでも反応がないので私はゆっくりと男の身体を横に向かせるように回した。
やはりどこを見てもカバンがないことを確認してようやく事態を把握した。
その時、ずっと工事現場で立っていた疲れがどっと出るのを感じた。
しばらくあのお金でどうにかなると思ったのに…
時間をかけ、身体がボロボロになるまで働いて、そしてよくやくもらったお金を、今一瞬のうちに奪われた。
驚きと虚しさとじわじわと痛む足を感じながら、私は泣くことすら出来なかった。
さっきまで優しかった雨までもが、激しく私を打ち付ける。
帰るしかない…
手ぶらで?
明日のご飯、いや夜ご飯どうしよう…
また明日すぐに日雇い探さなきゃ。
頭がごっちゃになりながら、私はようやく歩き始めた。
「えぇ~や〜〜」
突然背後から雨に紛れて歌声が聞こえだし、私は思わず振り返った。
多分酔っぱらっているのだろう、フラフラと陽気に歩く中年の男が目に入った。
私も酔っ払えたら、あんな風に楽しい気分になれるのだろうか。
しかし、今の私にはお酒を買うお金すらない。
「ハッハッハッハッ~~」
「っ!大丈夫ですかっ?」
今度は突然笑い出したその男は、身体を大きく揺らしたかと思うと、派手に前のめりに転び、私は咄嗟にその男に駆け寄った。
「んー」
呻くだけで顔を上げない男を私は、トントンと背中を叩いた。
それでも反応がないので私はゆっくりと男の身体を横に向かせるように回した。