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近くて遠い
第28章 にわか雨
「なんだって!?」


突然声を荒げた要に斎藤は身体をビクンと震わせた。


「斎藤、それは確かかっ!?」


「た、確かだと思いますっ…私は目がいいですし、服装こそ違いましたけど、確かにあのメイドはあの日の…」



運転席に身を乗り出していた要が斎藤の言葉を聞いて、一気に身体を脱力させて、後ろの席にドカッと座った。



「………メイドじゃない」


「は?」



要は両手で頭を抱えた。



やはり、そうだった…。


真希さんはあの日の…。



だが何故名乗らない…?


忘れられているのか?


────────忘れてなんかっ…



何かがおかしい…


あのみすぼらしい少女と大企業の社長である有川社長がどこで出会うのだ?


よく考えれば母親も弟もあの屋敷にいるのは不自然だ…


何かある──



「要様?」



急に黙った要を心配そうに斎藤が声を掛ける。



「斎藤、」


「はい。」



「……調べたい事がある、手伝ってくれ。」



「か、かしこまりました。」



斎藤は今までになく、意気込んだ様子の要に思わず唾を飲んだ。


そしてシートベルトをして、アクセルを踏む。



何かある。


それを暴いてみせる。



要は拳を握りながら、そう心の中で堅く決意した。


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