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近くて遠い
第29章 虚構の愛、真実の愛
────────…

真希の言葉に要は立ち止まった。


そして振り返って、手を伸ばしながら、真希の方へ進んだ。


「あぁっ……」



真希が泣いている声が聞こえる。


それに耳をすませて要は真希の姿を探す。




「覚えてますっ…!忘れるわけがないっ…鮮明に……鮮明に…っ…。だって私もあの時あなたに──」



「真希さんっ…」



触れた真希の身体を要は抱き寄せた。



見つけた…



やっと…


やっと……



泣き止まない真希の顔を要は手のひらで確かめるように触れた。



「っ…」



目、鼻、頬……


要の手が真希の顔の上を滑る。


そして


あの日魅せられた小さな唇…


溢れた気持ちは止まることを知らない──






「愛してるっ……」






要は再びそう呟いてその唇にゆっくりとキスをした。






良かった──




真希さんが



あの日の少女で──



要は涙を流しながら、長く真希と唇を重ねていた。
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