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近くて遠い
第32章 祭り
────────…
「すごい…」
提灯の温かい灯りが揺れる。
いらっしゃーい、という威勢のいい声。
どこから漂ってくるのか、食欲をそそるお祭り独特の醤油の匂い。
みんなが綿あめやあんずアメを頬張っているのを隼人が羨ましそうに見つめるなか、要さんは鳥居の前でポツリと呟いていた。
一際目立つその容姿に加え、お祭りに似合わぬスーツ姿のせいで、周りの女の子がキャーキャー言っている。
つい誘ってしまったけれど、よく考えたら、要さんは、この前まで大企業の社長秘書をやっていた人。
場違いなところに連れてきてしまった…と私は今さら恥ずかしくなってしまった。
「お祭りってすごいなぁ…」
やっぱり…初めてみたい…
「あ、あの、すみません、なんか、こんなところにっ…」
私はぐいぐいと引っ張る隼人に身体を持ってかれながら、じっと鳥居の下でお祭り全体を見上げる要さんに謝った。
「えっ…?なんで謝るんですか?」
「だって…要さんみたいな人にこんな庶民のっ…」
慌てる私を見て要さんは目を丸くしたあと、大きな口を開けて笑った。
「面白いなぁ真希さん…僕だって庶民ですよ。僕ね、ずっとアメリカに住んでたんです。成人してから日本に来て就職したんで、お祭りに来たことないだけ。」
にこっと微笑む要さん。
「そう…なんですか…」
庶民だと言いながら、海外育ちだという要さんに、私は少し顔を歪ませた。
やはり、とんだ場所に連れてきてしまった…
そう思いながらも、嫌な顔をするどころか目をキラキラさせている要さんを見ると、良かったのかな…?と少しプラスに考えることにした。
「お姉ちゃん!あれやりたい!」
隼人が指を指した先を見る。
「……射的?」
「うん!!」
私は隼人に引っ張られて射的屋までいくと、お金を払って5つのコルク弾をもらった。
「すごい…」
提灯の温かい灯りが揺れる。
いらっしゃーい、という威勢のいい声。
どこから漂ってくるのか、食欲をそそるお祭り独特の醤油の匂い。
みんなが綿あめやあんずアメを頬張っているのを隼人が羨ましそうに見つめるなか、要さんは鳥居の前でポツリと呟いていた。
一際目立つその容姿に加え、お祭りに似合わぬスーツ姿のせいで、周りの女の子がキャーキャー言っている。
つい誘ってしまったけれど、よく考えたら、要さんは、この前まで大企業の社長秘書をやっていた人。
場違いなところに連れてきてしまった…と私は今さら恥ずかしくなってしまった。
「お祭りってすごいなぁ…」
やっぱり…初めてみたい…
「あ、あの、すみません、なんか、こんなところにっ…」
私はぐいぐいと引っ張る隼人に身体を持ってかれながら、じっと鳥居の下でお祭り全体を見上げる要さんに謝った。
「えっ…?なんで謝るんですか?」
「だって…要さんみたいな人にこんな庶民のっ…」
慌てる私を見て要さんは目を丸くしたあと、大きな口を開けて笑った。
「面白いなぁ真希さん…僕だって庶民ですよ。僕ね、ずっとアメリカに住んでたんです。成人してから日本に来て就職したんで、お祭りに来たことないだけ。」
にこっと微笑む要さん。
「そう…なんですか…」
庶民だと言いながら、海外育ちだという要さんに、私は少し顔を歪ませた。
やはり、とんだ場所に連れてきてしまった…
そう思いながらも、嫌な顔をするどころか目をキラキラさせている要さんを見ると、良かったのかな…?と少しプラスに考えることにした。
「お姉ちゃん!あれやりたい!」
隼人が指を指した先を見る。
「……射的?」
「うん!!」
私は隼人に引っ張られて射的屋までいくと、お金を払って5つのコルク弾をもらった。