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近くて遠い
第32章 祭り
──────…

やっと会えた……



目の前にいるのは確かにずっと恋して止まなかったあの日の少女──




自分のせいで真希が怪我をしたあの日、要は眼の手術を受けることを決意した。


死ぬかもしれないという恐怖は自然と無くなっていた。



真希を守るためには一刻も早く、見えるようにならなければいけない。


考えたのはそれだけだった。


今冷静になって考えてみれば、死んでしまっては真希を守るどころではないのだから、その選択は明らかに無謀だ。


だが要には見えるようになって真希を迎えにいく未来しか浮かんでいなかった。

手術が成功したのは、その恐ろしく前向きで一途な姿勢に、神が味方したからかもしれない。






「要もお祭り行こー!」


ずっと真希を見つめて、その姿に感動していると、隼人が要の首に腕を回して叫んだ。



闇の中で鬱々としていた要を救ってくれたもう一人の小さな存在。


真希と違って想像でしかなかった隼人の姿は、要が頭の中で思い描いていた通りの笑顔をみせる少年だった。



「お祭り……?」


「うん!いこっ!」




ニコニコしている隼人が可愛らしくて要の胸がうずく。




「……近くの神社でお祭りがあるんです。今から隼人と行こうと思ってて…あのっ、良かったら…」



「……いいんですか?」




要の質問に、真希は少しビックリした仕草を見せると、フフっと笑った。



「当たり前じゃないですか…」



その言葉にドキン──と要の胸が鳴る。



「じゃあ…」


要の言葉に隼人がはしゃぎ出す。



それだけの会話なのに


要は幸せすぎて、また涙が出そうだった。



「行きましょうか。」



真希がそう言って歩き出す。



この日をどんなに夢見ただろう──



日が傾いてすっかり暗くなった中、


要と真希と隼人は、
太鼓と笛が陽気に旋律を奏でる方へと歩みを進めた。
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