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近くて遠い
第34章 Sweet Night
────────…

我慢していた欲が

アルコールのせいで見事に弾け飛んだ。


ずっと紳士に振る舞っていたが要とて男だ──


目の前にはずっと恋い焦がれていた人が、美しく着飾って自分を見つめていたら、保っていた理性は意図も簡単に飛んでしまう。



「愛してるっ……」



要は異常に熱くなった身体をそのまま真希にぶつける。



真希の名を呼び

愛を囁きながら、


要は真希の太ももの内側に手を這わす。




柔らかい肌の感触が


要を興奮させ、息を荒くさせた。



と、そのとき…



真希の身体が微かに震えだした事に気付いて、要は真希の首筋から顔をあげ、再び顔の両脇に手を付いて真希を見つめた。



「うっ……うぅっ…」



両手で顔を抑えながら、静かに声を洩らす真希を要は切な気に見つめた。




「どうして……泣くんですか…?」



息を整えながら、優しく問い掛けても、真希は顔を手で覆ったままだった。



怖がらせてしまった──



そう要は反省しながら、真希の背中に腕を回してゆっくりと身体を起こして抱き締めた。



「すみません…

想いが強すぎて…

止まらなかった…


怖がらせるつもりはなかったのに…」




要の問いに真希は激しく首を横に振ったまま泣いていた。



何を考えているのか


知りたい


やっと愛する人が腕の中にいるのに


まだ心が通っていない。



焦ることはない


時間はたっぷりある。



なのに、



時間を掛ければ、


心が通うのだろうか…?


気付きたくないことから…目を背ける…。




こんなことが、一体いつまで続くだろう…




要は少し不安になりながら、涙を流す真希を力強く抱き締めた。
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