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近くて遠い
第39章 復讐
光瑠さんはそのナイフをみて身体を止めた。
「……んっ!んーー!!」
「おっ、お前も黙れっ…!!」
騒ぐ私に男がどもりながら言う。
ひどく汗をかいているように見えた。
「渡辺っ…!!頼むやめてくれっ!」
光瑠さんが男に向かって苦しそうに言った。
光瑠さんの知り合いっ…?
渡辺と呼ばれた男はその光瑠さんの言葉を聞いて、フハハハと声を出して笑った。
「丁度いいっ…!この女が大事なんだろうっ…!どうせなら目の前でっ…目の前で殺してやるっ…!!」
おどおどしたと思ったら、笑い出したり、どもったりする渡辺の言葉に光瑠さんが顔を歪ませて、頼むっ…と言いながら地面に膝をついた。
光瑠さんっ……
「渡辺っ…俺がっ…俺が悪かったっ……!ちゃんと考えもせずに苛つくという理由で権力を振りかざしてっ…お前が大事にしているものを軽く扱ったっ…」
光瑠さんが地面をみながら語り始めた。
何の話かは分からない。
ただ、必死に渡辺に詫びている光瑠さんの姿がある。
「っ…!!うるさいっ!今さら何を言うんだっ!!」
渡辺が声を荒げてナイフを掴む力を強くした。
「すまなかったっ…頼むっ…!何でも…何でもするっ!だから、真希はっ…真希は離してくれっ……」
光瑠さんはそう言って地面に手をつけて頭を下げた。