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近くて遠い
第40章 温かな場所
「やめてくれ、そんな趣味はない。」


眉をひそめた要を見て酒田が笑った。



「……呑みますか、奢りますよ。」



酒田の言葉に、そうだな──と要は答えた。



顔を上げると

月が明るくて

眩しいほどだった。





事故に遭わなければ、違った人生があったのかもしれない。



運命とはこの事か──




要はそれを痛感した。



要はポケットに手を入れて、隼人からもらったまつぼっくりを見つめた。





自分は十分幸せだった…



こんなに人を想ったのは


初めてだ。



世界が輝いて見えて…






だから──




もしあの日をやりなおせたとしても、




そして


そのあと


事故に遭うことも


試練が待っていることも


知っていたとしても……



真希さん……



僕は迷わずに



もう一度あなたに出会う運命を選びますよ───



要はそう一人心の中で呟くと、まだ冷たいその空気を身体いっぱいに吸い込んだ。




「呑むぞ!!」




ニカッと笑った要に酒田が頷く。




要は清々しい気持ちで、前を向いて歩いた。




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