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近くて遠い
第7章 接客
有川様は大きく目を見開いてしばらく黙ったあと、噛み付くように私の唇を奪った。



……!?!?



突然のことで何が何だか分からずに戸惑っていると、口内に有川様の舌が侵入し暴れだした。



「んんん……ふん…んん!!!!!」




息が出来ずにただ、苦しんでいる私に有川様はしばらく乱暴にキスを続けると、突然唇を放し、私の背中に腕を回して一緒に身体を起こした。



「はぁ…はぁ……あ…ありか…わさ…ま…」




いま…何が起きたの…っ?



息を整えるのに必死な私を鋭い目付きで睨む有川様。



「お前の言う通りだ!お前は金がないから金のある俺に従うしかない!!生意気なことを言う権利はお前にはない!!!!」




有川様の叫び声が部屋全体に響き渡る。


乱暴にされた唇は少しだけ痛んで、息もまだ整わない。



ファーストキスは大好きな人とするもんだって…


幼稚園のとき、おとぎ話でお姫様と王子様のキスを見て憧れてた。



だけど、現実は違った。


確かに絵本の王子様のような見た目の人だけど、そんなのはこの人を覆っている皮でしかない。


中身は、横暴で人の心を持たない悪魔…。



「っ……あなたに…」



辛うじて声を出したときには、頬に涙が伝っていた。


この人に会ったせいで私は…




「言いたいことがあるならはっきり言え。」



ほら、こうやって全く悪びれることなく、横柄で偉そうにしている…



「あなたに…








あなたに会いたくなかった。」






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